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東京地方裁判所 平成6年(特わ)2862号 判決

本店所在地

東京都足立区西新井栄町二丁目二七番四号

株式会社スリムヘルス商事

(右代表者代表取締役 長根尾敏男)

本籍

東京都足立区東綾瀬一丁目二六番

住居

東京都足立区西新井栄町二丁目二七番四号 グランデール四〇七号

会社役員

長根尾敏男

昭和二六年七月二一日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官菊地則明、弁護人松岡庸介、同寺島秀昭、同鈴木博各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社スリムヘルス商事を罰金四〇〇〇万円に、被告人長根尾敏男を懲役一年六月に処する。

被告人長根尾敏男に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社スリムヘルス商事(平成五年五月一四日以前は有限会社スリムヘルス商事。以下「被告会社」という)は、東京都足立区西新井栄町二丁目二七番四号(平成四年五月三一日以前は同区関原二丁目三九番三号)に本店を置き、栄養補助食品の卸売等(平成四年五月三一日以前は痩身美容室の経営及び栄養補助食品の販売等)を目的とする資本金一〇〇〇万円(平成五年四月一一日以前は三〇〇万円)の株式会社であり、被告人長根尾敏男(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成元年一月三一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八二三九万〇〇三九円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成二年二月二八日、東京都足立区栗原三丁目一〇番一六号所在の所轄西新井税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八万八四八二円でこれに対する法人税額が二万六四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第一五九号の1)を提供し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三三六四万三八〇〇円と右申告税額との差額三三六一万七四〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億九六二七万七二六五円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年二月二八日、前記西新井税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八七六四万八三七六円で、これに対する法人税額が三三七四万三〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額七七一八万五五〇〇円と右申告税額との差額四三四四万二五〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億五一二〇万八四九〇円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年三月二日、前記西新井税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億二六一九万二二六九円で、これに対する法人税額が四六一六万五九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億三〇五四万六九〇〇円と右申告税額との差額八四三八万一〇〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の目標)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書六通

一  御園生喜枝子(二通)、安藤ちづる、芦田節子及び中間正孝の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の売上調査書、受取手数料調査書、名義使用料収入調査書、広告使用料収入調査書、商品仕入高調査書、期末商品棚卸高調査書、給料手当調査書、通信費調査書、雑費調査書、受取利息調査書、損金の額に算入した地方税利子割調査書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の税務署所在地についての捜査報告書

一  登記官作成の登記簿、登記簿閉鎖役員欄用紙、閉鎖登記簿及び登記簿閉鎖目的欄用紙(二通)の各謄本

判示第一及び第二の事実について

一  大蔵事務官作成の広告宣伝費調査書及び水道光熱費調査書

判示第一の事実について

一  検察事務官作成の売上金額の異動及び給料手当金額の異動についての各捜査報告書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成七年押第一五九号の1)

判示第二及び第三の事実について

一  大蔵事務官作成の登記手数料収入調査書、期首商品棚卸高調査書及び事業税認定損調査書

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の2)

判示第三の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示第一ないし第三の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項(第一及び第二の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)、二項(情状による)

2  被告人

判示第一ないし第三の各所為につき、法人税法一五九条一項(第一及び第二の罰金刑の寡額につき、前同)

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、栄養補助食品の卸売等を目的とする被告会社の社長であった被告人が、売上を除外するなどして、三事業年度にわたり、合計一億六一四四万円余の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率は通算約六六・八パーセントである。このような脱税額、ほ脱率、犯行態様等のほか、この種事案については一般予防の必要性が高いことにかんがみると、被告人及び被告会社の刑事責任者は軽視できないところである。

他方、被告人は、国税当局の査察を受けて以来、事実を認めて調査及び捜査に協力し、当公判廷においても真摯な反省の態度を示していること、被告会社は、国税当局の指導に従い、本件三事業年度分の法人税を附帯税を含め完納していること、被告人には前科前歴がないことなど、被告人及び被告会社のために有利に斟酌すべき事情も認められる。

当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮して、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金五〇〇〇万円、被告人・懲役一年六月)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

〈省略〉

別紙4

ほ脱税額計算書

株式会社スリムヘルス商事

〈省略〉

株式会社スリムヘルス商事

〈省略〉

株式会社スリムヘルス商事

〈省略〉

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